スイレンとメダカと水槽の話(一)

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こうの一周忌に花が咲けばいいねと、Y子がベランダでスイレンの栽培を始めた。結果的にスイレンの花は咲かず、天候不順からか毎年咲いている家の前の池のスイレンの花も咲かなかったのだが、このスイレン鉢とともにやって来たメダカたちが、この夏、わが家に、幾多のドラマをもたらすこととなったのである。

 

スイレン鉢の導入を決めたのはY子であったが、メダカとかを育てるのは苦手ということで、メダカたちは僕が担当することになった。子どもの頃、実家で熱帯魚を飼っていたし、実は前から観賞魚には興味があったこともあり、すすんでメダカの世話をはじめた僕であるが、これが思った以上にうまくいかない。スイレン鉢立ち上げ1週目から、少し前まで元気に泳いでいたメダカたちが、ひとり、またひとりと亡くなっていくのである(あとからわかったことだが、これは最初に水あわせをきちんとしていなかったことが原因だったようだ。最初に来たメダカたち、ほんとうにごめん)。

 

こうして、亡くなったメダカたちに謝りながら、プランターに埋めてやるのが毎朝の僕の日課となった。日々の葬送にメンタルをやられ、悩んだ末に、職場の近所にある観賞魚屋さんで相談したところ、いろいろ教えてもらい、メダカも補充して一から出直すことにする。そんななか、ある日、メダカの赤ちゃんが水面を泳いでいるのを発見、僕もY子もとても喜んだのであった。

 

そうこうするうちにスイレン鉢もようやく安定、底に溜まったゴミの掃除屋さんとしてエビやドジョウも迎え入れ、賑やかにみんな元気に泳ぐ姿を日々楽しみにしていた暑い暑い八月のある朝、悲劇が起こったのである。

 

(つづく)