けんは、興奮してくるとそうでもないのだが、ふだんはおっとりしていて、自分からは甘えてこずにじっと待っている。ぼくらが朝起き出したり、出先から帰ってきたりすると、こうはすぐに自分からかけよってくるのだが、けんはじっとしていて、ぼくらのほうからよしよししにいってはじめて、ごろごろごろごろ甘えてくる。二人で遊んでいても、ふと気が付くとけんの姿が見えなくなり、Y子と二人で探し回ると、奥の部屋の隅っこの洋服のスタンドの裏や本棚の片隅で発見されるのをじっと待っている、そんなことがよくある。いっぽう、こうはというと、基本的には積極的に擦り寄ってくるのだが、たとえば休みの日にぼくらが遅くまで眠っていて、こうが起こしに来ても起きなかったのだろう、目が覚めるとベッドの枕もとの下で、じっとうずくまって待っていたりすることもある。二人とも、人なつっこくてさびしがり屋ではあるのだが、その表現の仕方はずいぶんちがう。ただ、けんの場合は、ご飯にだけは妙に積極的で、ぼくらが何か食べていると必ず近寄ってきてあわよくば一口食べようと興味津々だ。こうはというと、人間の食べ物には、けんほどには興味がない。
うるの納骨の少し前から、また病気になったらどうしよう、とY子が言う。消毒はもう十分にやったはずだが、もしも手落ちが残っていたら、と。そんな可能性はきわめて低いし、実際にウイルスが残っていても発症する可能性もきわめて低い、それに現実に二人とも驚くほど元気だし、しかしそんなことは頭ではわかっていても、不安をぬぐえないのだろう。その話をT間さんにすると、うるちゃんが守ってくれてるから大丈夫だよ、と言ってくれた。こうやって文章にするとその感じをうまく伝えられないが、ぼくらはそれを聞いて胸にぐっときてとても気持ちが休まりました。ありがとうございました、T間さん。