こうのこと


猫の心筋症は、発症しても数ヶ月は生きる場合も多いと聞いていた。だから、こうが発症したときも、助からないとはわかっていたが、そんなにすぐに劇的に病気が悪化するとは思っていなかった。しかし、病院から帰ってきたこうは、もう歩くことも難儀するほど悪くなっていた。

だから、その時はあまりわかっていなかったのだが、もう意識も朦朧として苦しかったんだと思う。病気になったこうは以前のかわいらしい声を失い、苦しそうにあーあーと言いながら、動いては倒れながら、家中を不自由な足でゆっくりと動き回っていた。ただ大好きだったY子の部屋は除いて。苦しくてじっとしてられなかったんだろう。大好きだったY子の部屋には、悲しくてもう入れなかったのかもしれない。

こうはその状態で11日間頑張った。Y子も希望的に考えていたんだろう。もう少ししたら塾の仕事が休みになるから、そしたらこうちゃんとずっと一緒にいてあげられるから。でも、11日目の夜、こうが涙を流したとき、僕はこうがお別れを言っているんだと思った。そしてその次の朝、こうは息をひきとった。Y子と僕に見守られながら。

発症してから、こうが何も食べず水も飲まないので、嫌がるこうにスポイトで少しずつ食べさせたりしていた。今となっては、そのままそっとしておいてやったほうがよかったのかもしれないと思う。

(写真は2016年5月8日)