扇子

扇子を回すけん

だいぶ以前にこの日記にも書いたが、まだ、「けん」が子猫のころに大好きだった「おもちゃ」にY子の扇がある。扇袋に入れた扇を器用ににくるくると回して、きれいに袋から取り出してしまうのである。ほんとうに扇を空中でくるくる回転させるので、まるでけんが踊っているように見えたものだ。

「けん」が大好きだったこの扇、しかしちょっと事情があってなくなってしまい、それからずい分時間がたって、僕らもそのことをすっかり忘れてしまっていた。ところが、つい先日のこと。片付け物をしていたらなぜか扇子が出てきて、ふとあの扇のことを思い出し、今度袋買ってきて入れたら喜ぶかなあとY子と話したりしていたのだが、まあそのまえに何か布でくるんでみたらどうだろうと、とりあえずハンカチで包んで輪ゴムをかけてそれとなく居間に置いておいたのである。

さて、目が冷めて起きてきた「けん」。どうなるかな、もう忘れてしまってるかなとドキドキしながらY子と見守っていると、それまでに眠そうに歩いていた「けん」、はっと気がついたようで立ち止まり、猛然とハンカチ扇子に襲い掛かり、かつてのようにくるくると回しだしたのである。輪ゴムなのではずしにくいのか、以前のように扇子を取り出すまでは行かなかったが、それ以外は子猫のときと同じように、夢中になって遊んでいる。

「けん」にとっては獲物なんだろうなあ。大興奮で遊ぶ「けん」を見るのは嬉しくもあるが、かつて扇がなくなったとき、あの獲物どこ行ったのかな?とか思ってたのかなあと、少ししんみりした気持ちにもなった。あのままずっと続けていたら、今ごろはもっともっと熟達して、芸達者な猫になっていたかもしれないなあ。

順調にトレーニングを進めていた先週だが、金曜日はふとした成り行きで久しぶりにM谷と飲みに行く。翌土曜日は仕事でクライミングはお休みだったので、少し気が緩んだということもあった。その土曜日はR大でSyさん、Nyさん、Ykさんと打ち合わせ。想像以上に話が盛り上がり、そのまま宴会へ突入。いったん解散したのでさあいよいよ翌日に備えてと思いきや、Syさんにそのまま二次会へ連行され、結局12時近くまで…。明日はクライミングでと言い訳する僕に、昔は朝まで大酒飲んでそのまま八峰登ったもんだと山岳部出身のSyさん。すみません、その境地にはまだまだ至りません。とはいえ、大変面白い一夜でした。ありがとうございました。

というわけかどうか、日曜日、5週目の人工壁は、何度もトライしたが最後の核心部でどうしても手が出なくて、残念ながらレッドポイントならず。主観的にはビビッているつもりはなかったのだけれど、ためしにもう一度トップロープでやってみると登れたから、結局のところビビッているのだ。なぜあとひといき勇気が出なかったのだろう。帰りの電車で激しく後悔が沸き起こる。落ちる練習もしないとだめだなあ。まあ一歩一歩だ。

夜。落ち込みながらビールを一本だけ飲んで晩飯を食うと猛烈に眠くなり、そのまま朝まで眠る。早朝、レッドポイントを軽々達成した夢を見て、いい感じで気持ちよく目が覚めた。よし、このイメージで来週は、とTさんに早速報告したところ、著名な某ラカン研究者いわく、実現した夢はだめなんだぜとTさん。うーむ、道はまだまだ険しいか…。

扇を回す「けん」、動作が速すぎて写真がうまく撮れない。ああ伝えられないのがもどかしい…。