「こう」は、いつも開け放しの部屋のふすまが、たまに閉まっているととても気になるようだ。以前にも書いたが、Y子が部屋を閉め切ってアイロンをあてたりしていると、何とかふすまを開けようとすきまのところを手でカリカリしたりしている。それでこれは昨日の朝の話であるが、連日の深酒で遅くまで眠っていた僕は、「こう」のにゃーにゃー言う声とふすまを引っ掻く音で目を覚ました。僕を気遣ったY子が、僕の部屋のふすまを閉めてくれたのだが、それが「こう」の好奇心を刺激したらしい。ふすまを開けると、「こう」が飛び込んできてベッドの枕元に手をかけ、僕を覗き込む。何だか心配してくれていたような気がして、うれしい。なでると「こう」もゴロゴロ言う。
そして、今夜、けん・こうが眠った頃を見計らって、Y子がアイロンをあてる。起きてくるかな? 眠ってるから大丈夫でしょ。Y子がふすまを閉める。と、どーんという音がして、別の部屋で眠っていた「こう」が廊下にジャンプして飛び出してきた。猫の気配を察知する能力は素晴らしい。しばらくして、「けん」もやって来て、「こう」がふすまをカリカリするのを見てる。ここまではいつもの見慣れた光景だったのだが、今日の「こう」は頑張った! あちこち場所を変えてはふすまカリカリに何度もチャレンジしていた「こう」は、ついにふすまを開けることに成功したのである。ふすまのすきまに手を突っ込んで、見事に少しだけふすまを開けたのだ。上手にできたな、こう!と僕。まだ危ないから抑えといて!とY子。その間にも、僕がふすまを閉めるたびにまた開けることに成功する。しばらくして、Y子、アイロン終了。誉めていいのかしら?とY子。上手にできたんだから誉めてやろうよ、と僕。二人で誉める。達成感からか、「こう」はしばらく動き回っていたが、やがて疲れたのかまた眠った。僕は妙にうれしくて、祝杯だとビールを開ける。