万策尽きる。

寝ている場合じゃないよと、朝、Y子に起こされる。


このとき、Y子は黙っていたけど、明け方、黄疸の症状が出ていたようだ。


衰弱が激しい。


外はどしゃぶりの雨。
すぐにクルマをまわしてきて、病院へ。
H岡に近づいたところで、うるちゃん、うるちゃん、と、助手席のY子が呼びかけてギクッとする。息を確認して一安心。病院へついたのは9時半くらいか。


駐車場にクルマを停めてから病院へ行く。先にうると二人で行っていたY子がすでに状況を話していたようで、雰囲気が重い。


診察室へ。
黄疸、貧血、脱水の症状。
黄疸と貧血のどちらの治療を優先するか調べるため、血液を調べる。
貧血の度合いが激しく、すぐに輸血が必要との診断。


ここでまた決断を迫られる。


輸血をしても、2、3日から1週間くらいの効果しかないだろう。
その間に回復できるかどうかは、やってみないとわからない。
輸血がうまくいっても、数日後にはおそらくまた輸血を繰り返すことになるだろう。
もちろん、その間に他の症状が進行する可能性もある。
いずれにしても、いままでの対処てきな治療とは異なり、はっきりと延命治療になる。


しかし、可能性が少しでもあるならば、やるしかない。


とりあえず、先生方のネコちゃんの血をテストしてみることにする。
うるは、いったん入院。ぼくらはひとまず帰る。


帰り道、KT野のファミレスで食事をしていると、病院から電話。
先生のネコちゃんの血は、2匹とも合わなかったらしい。
誰か知り合いのネコを、ということで、迷わずT間さんに電話。
T間さんは、休んでいたみたいだけど、すぐに引き受けてくれた。
ぼくらは自宅に戻って待機。
ペットショップの社長さんに電話して状況を伝え、どうしても血が合わない場合は協力してもらえませんかと言うと、社長さんもすぐに了解してくれる。
少し横になって休む。
電話がなったが出そこなう。T間さんだ。
かけなおそうとしていると、病院から電話。


―T間さんのネコちゃんも血が合わない。
 断定はできないけど、たぶん、B型だろう。
 あちこち電話して聞いてみたが、B型のネコが見つからない。
 比較的、B型が多いと言われる、長毛の純血種で、できれば5歳くらいまでのネコちゃんがいい のだが。


何とか探してみますと答えると、状態が良くないので、4時か5時までに見つからなかったらとりあえず病院に来てもらったほうがいいとのこと。
ほかに思いつかないので社長さんに電話。アメリカンショートヘアーの子やったらすぐに連れて行けますがといわれて、また病院に確認。アメショーはほぼ100パーセント合わないだろう。Y子、たまらず、何とかしてくださいと社長さんに電話。しばらくして電話があって、うるの両親がS県にいるのですぐに引き取りに行って連れて行くと言ってくれた。時計を見ると、午後2時半。いまからなら1時間ほどで、うるの両親は病院に来れるのではないか。その旨を病院に伝え、T間さんにも電話する。T間さんはまだ病院にいて、いまから帰るところだという。またすぐに病院から電話。状態がよくないのですぐに来てもらえませんか。すぐにクルマを飛ばして3時くらいに病院へ。


先生方が待合室で、うるを前にして地べたに座っている。
朝よりもさらに衰弱が激しい。
だいぶ小さくなっちゃったなあ、うる。


この段階で、貧血は溶血性のものであることが判明。FIPが悪さをして、うるの免疫が、うるの血を壊しているのだ。


衰弱の進行が激しいので、輸血をしてもそのショックに耐えられるかどうか、あるいは輸血中に、ということもありうると男先生。女先生の目に涙が溜まっている。


みんなで座って話しあう。家へ連れて帰ろう、うる、もう十分がんばったよ、とY子。ぼくは力が抜けていって、思考力もはたらかない。やがて、ペットショップの社長さんが、うるの父ちゃん母ちゃんを連れて到着。ああだいぶ弱ってるなあ、とうるを見て悲しそうに言う。うるちゃん、ママだよ、とY子。うる、ちょっとだけ目を開ける。


結局、社長さんには謝って、うるは連れて帰ることにした。


うる、すぐにY子の部屋で横になって休む。