けんこう兄弟の思い出(4)

なぜだかよくわからないし、うまく言えないのだけれど、けんは彼がそばにいるだけで微笑んで笑ってしまうような、不思議な力を持った猫だった。そばにいるだけで安心してリラックスできるような。それは、最後の日までそうだった。

 

だから、どんなに状況がきびしくても、僕は楽観的になれたと思う。それは、けんのおかげだった。

 

だから、けんと三人になってから、僕らは一度も喧嘩しなかったと思う。でも、最後にけんが入院する前、今後の治療方針をめぐって(具体的には薬をあげるかどうかということ)、少しだけ気まずくなってしまったことがあった。けんがもうしんどくてたまらなかったときに。それが気がかりである。その日、結局僕らはけんに薬を飲ませた。それが良かったのかどうか。けんに無意識のうちに毎日謝っているのは、それがずっと僕の中で引っかかっているからかもしれない。