それから

元気だった頃のこうは、いつも僕が起きるのを待って、朝の慌ただしい時間を一緒に過ごすのが日課だった。僕の出してやったごはんを食べて、朝のニュースを見ながら朝ご飯を食べる僕の横に座り、新聞の上に乗って新聞を読むのをじゃましながら頭突きするかのようにぐいぐい頭を押し付けてきて、全力で甘えるのである。ごろごろごろごろ言いながら、撫でるのが物足りないともっともっとと肉球で軽くタッチしてくる。そして気が向いたときには、出かける僕を玄関まで見送ってくれた。

一方、けんはマイペースというか、眠っていたり起きてきてもごはんを食べてすぐ眠りに行ったりと少なくとも朝に関しては、僕とこうの時間にけんは基本的には入ってこなかったのでる。もちろんたまに気の向いたときにはこうとふたりでお見送りに来てくれたものだが。

それが、こうが亡くなってからというもの、けんは毎朝僕の起きるのを待って、起きたら全力で駆け寄ってきて、朝の時間を僕と一緒に過ごすようになった。新聞乗りや頭突きこそしないものの、僕の前でころころ転がるので撫でてやるとごろごろごろごろ言っている。そして台所と居間の境目で横になって、出かける準備をする僕を見守ってくれる。今朝などは一瞬だけ新聞乗りもした。

だから、亡くなる前に、こうはけんに何かを伝えたのだと思う。出かける前、僕はかつてこうに言っていたように、「Y子とお家をよろしくな」とけんに言って出かける。けんよ、君も寂しいと思うが無理せずがんばっていこう。Y子と僕と家族三人で。