奥穂へ

奥穂ピークにて

週末は一日休みをとって、憧れの穂高へ。涸沢からザイテングラートを経て奥穂に登り、吊尾根、重太郎新道を経て岳沢に下る、前夜発一泊二日の山旅である。

前夜発で沢渡に入り、少しだけ仮眠して始発バスで上高地へ。休日の上高地は、朝から大勢の登山者や観光客で賑わっている。眠い目をこすりながら林間の道を行くと、明神が、前穂北尾根が、そしてこれから目指す奥穂が、やがて屏風岩がと、梓川を隔てた左手に、次々と素晴らしい山岳風景が広がってくる。

横尾谷に入った辺りからようやく山道となり、3時間ほど登って涸沢へ。予定よりかなり早めに着いたので、稜線上の奥穂の小屋まで行くかどうか迷ったが、涸沢の素晴らしい景色を眺めながらの生ビールの誘惑に負け、この日は結局ここで行動終了。北穂、奥穂、吊尾根と続く穂高の稜線と涸沢カールの大雪渓、登ってきた涸沢と常念、蝶ガ岳の山並みを眺めながら生2杯ほど飲むと眠くなって、昼寝をする。ああ贅沢な時間。

二日目はいよいよ奥穂にアタック。5時、緊張しながらの行動開始。ヘッドランプをセットして一歩小屋の外に出ると、風もなく暖かで、すでに明るく、拍子抜けするくらい穏やかで静かな朝だ。恐れていたザイテングラートの登りも、あっという間に終わって稜線上の小屋へ。そこからひと登りで奥穂に登頂する。いつのまにか、もう高所恐怖症は克服できたのかな?

3190mの奥穂のピークは文字通り360度の大パノラマ。北には北穂、槍、さらには立山連峰の山並みが、南には南アルプスの山々と富士山、西は白山から御嶽、そして目の前にはジャンダルムの威容が聳え立つ。それにしてもなんという穏やかな山頂。風もなく、見上げると雲ひとつない真っ青な空が広がっている。高山でこれほど穏やかな天候に恵まれたのははじめてだ。天候によってイメージもずいぶん違うもんだなあ。

奥穂からは右に上高地、左に涸沢を見下ろしながら、吊尾根をたどって紀美子平へ。これまた恐れていた吊尾根だが、とくに怖いところもなく快適に歩けた。と、ここまでは快適かつ順調な山行だったのだが、前穂への登りがけっこうつらい。けっこうバテる。いやあ、これから長い長い下りがあるんだけど、こんなことで大丈夫かなあ。

最後の難関、重太郎新道の長い鎖場も快適に通過。しかし、岳沢への下りはやはり長かった。高度を下げるにつれ気温も上がり、汗だくになりながらひたすら下りるが見下ろす岳沢の小屋がなかなか近づいてこない。だんだん雲も出てきて夕立が来るかもと気持ちは焦るが、足がついていかない。結局へろへろになりながら、予定を1時間近くオーバーして岳沢の小屋へ。小屋にたどり着いたら冷たいジュースを飲もうと、それだけを心の支えに歩いてきたのだが、無情にも「ジュース売り切れ」の張り紙が出迎えてくれた。

岳沢で30分ほどの大休止をとり、さて出発と立ち上がろうとすると足が動かない。ここからは、もうほとんど苦行のような下りである。ようやく上高地の遊歩道に出るが、ここからバスターミナルまでがまた長い。いやあ、ほんとに最後はバテバテでした。

というわけで、反省点も多々ある穂高山行であったが、全体的には天候にも恵まれ、憧れの穂高の稜線も快適に歩けたので意義深い山行であった。もう少し持久力をつけて、次の山行に備えよう。留守番のけんこうY子もありがとう。