猫バランス

ふたり仲良くごはん

新タワーには、やはりこうはなかなか馴染めない様子である。考えてみれば無理もない。旧タワーにはもう3年近く入り続けているのだから。

ところで、けんがあっさり新タワーに順応したことで、けんこう兄弟の「縄張り」について、ふと考えた。けんこう兄弟がわが家にやって来てすぐの頃、男の子の兄弟を引き取ったという話をすると、そのうち縄張りとかできてくるかもしれないよと何人かの人に言われたものだが、ふだん一緒に生活しているかぎりはそうしたことを感じさせることもなく、いままでそれほど意識することもなかったのであるが、けんもこうもあらためて考えてみると、自分だけの領域を持っているようでもあるのである。たとえば、

けん=新タワー、物見台、押入れ、パソコン台、台所のゴミ箱の上、タンスの上、ベッドの下、Y子の部屋の座椅子、パソコンの前、ケージにおいたかごの中、洗濯機の上

こう=旧タワー、居間のヒーターからテレビの前周辺、Y子の部屋の座布団、大型タワー横の本棚の上、風呂桶の中、流しの上

という具合で、こうしてリストアップしてみると、こうの独自領域が少ないことに気づく。しかも、けんの領域のうち、「物見台」「押入れ」「タンスの上」「ベッドの下」「ケージにおいたかご」は、かつてはけんこう兄弟でシェアしあっていたのが最近はけんの専用に、「パソコン台」はかつてはこうの領域だったのが1年ほど前なぜか急にけんの領域に変わってしまい、「洗濯機の上」はこうが寂しい時だけに乗る特別な場所だったのが、昨年の秋くらいからか、けんが寂しい時だけに乗る特別な場所にこれまた急に入れ替わってしまったものだ。だからけんの占有領域が拡大傾向にあると考えることもできる。

どちらかといえば、こうのほうがお兄さん格で、たまにけんがむずかったりしているときなど優しくなだめたりしてやっているくらいなのだが、実はけんのほうがこの家の支配者なのか? これは意外な大発見だとY子にそのことを言ってみると、考えすぎじゃないのそんなこと絶対ないわ、こうのほうがお兄ちゃんだから先にいろいろ試してみて、あとでけんに譲ってあげるんじゃないの、とそっけない返事。まあたしかに、お互いの領分の取り合いでケンカになったりするようなことはまったくないし、ごはんもいつもふたりぴったり寄り添って適当にシェアしながら食べている。しかし、それも微妙な均衡状態が維持されているからだといえなくもなく、ふたり仲良くくつろぐ様子を眺めながら、わが家の猫パワーバランスについて、僕はしばし思いをめぐらせるのである。