法要

元気だった頃のうるです。

本日はうるの法要の日。朝からH山へ出かける。昨日は一日雨だったが、今日は素晴らしい秋晴れである。お坊さんが少し遅れたこともあいまって、いつもよりも大勢の人たちがいるようだ。うるのことを思い出しながらお参りをする。よくボール遊びをしたこと。僕の布団で一緒に眠ったこと。パソコンに飛び乗って邪魔をしにきたこと。電話をしていると寂しそうに見上げていたこと。僕の毛布で夢中でもみもみをしていたこと。ごはんが待ちきれずに、準備をするあいだ台所でぴょんぴょん飛び回っていたこと。一生のうちの多くの時間を闘病に費やしたうるだったが、いまは明るくお参りをしてやりたい。缶詰とポカリを供え、蝋燭とお線香に火をつける。お坊さんの読経を聴く。

お昼前に帰宅。けんこうが飛び出してくる。今日はうるちゃんのお参りに行って来たんだよ。けんちゃんこうちゃんの先輩だよ。種類が同じだから親戚というべきかも知れない。以前にも書いたように、けんこうとうるは一度だけ出会っている。病院の待合。しんどそうにじっとしていたうる。まだものすごく小さくて、ふるふるふるふる動き回っていたけんこう。そのけんこうといま一緒に暮らしている。けんこう兄弟はこの家にうるという猫がいたことを知っているのだろうか。きっと知ってるよとY子。あのとき病院で会ったから。

夕方、起き出してきてひとしきり遊んだ後、珍しくふたりとも居間で眠る。こうは猫タワー、けんは座布団の上。その姿を眺めながら僕はビールを飲む。五年後、十年後もこうして静かな夕刻を過ごしているのだろうか。ちょっとだけ将来のことを考える。少し深刻な気持ちになる。いろいろがんばらねばならない。

夜、みんな寝静まった後、一人でロバータ・フラックを聴く。音に反応したのか、こうが走ってやって来る。ジャニス・イアンジェシー。ベッドの真ん中にぽっかりと空いた穴。それを聴きながら僕は、いつものように甘えて洗濯機に乗ったこうを、よしよしと撫でる。飛び降りて台所に移動したこう。ぷるぷるいうごろごろ音が周囲に反響して、いつもより大きく聞こえる。レナード・コーエンの不思議な曲、スザンヌ。川べりで聴くボートの音。ビールが頭に回る。気がつけばいつのまにかこうは、再び猫タワーで丸くなって眠っている。