まだ早すぎるのでは

ないかと、当初はいろいろ葛藤もあったのだが、いまは新しい猫たちを迎え入れることが決まってよかったと思っている。しかし、それを決めたときのぼくは、まったく新しい猫たちを受け入れることができる状態にはなかったようだ。


絶対にあいだを空けたらだめだから、とY子のことをよく知るT間さんから、すぐに次の猫を飼うようにと言われていて、Y子は嫌がるんじゃないかなと思いながらそれとなく聞いてみると、そうじゃなきゃもたないから、新しい猫ちゃんがほしい、とY子は決然と言った。ぼくはといえば、自分は当分そんな気にはなれないんじゃないかな、と何となく思っていたのだけれど。


うるの死の、ショックの覚めやらぬ状態で、ブリーダーさんのお宅へ行く。
ラグドールの男の子の兄弟、2ヶ月。
最初は人見知りしてるようだったけど、すぐにくるくる遊んで、ぼくらにも甘える。
とてもかわいい、が悲しい。


新しい猫を飼うなら、うると同じ種類で、同じカラーで、男の子で、名前もうるにしよう、そう考えていた。だが、病院の男先生に、その考えを言ったわけではないのだが、そういう負のオーラが出ていたのか浅はかなぼくの考えを見抜いたようで、そのような考え方は間違っている、とはっきり言われる。新しい猫に、うるのことを絶対に投影してはいけない、うるのことはうるのことで忘れずに、新しい猫ちゃんは新しい猫ちゃんとして接してあげてください。たしかに当たり前のこと。


いろいろY子と悩んだ結果、これも何かの縁だねと、男の子の兄弟をいただくことにして、いまはもう、うるはうるとして、新しい猫たちは新しい猫たちとして、自然と考えられるようになった。Y子はといえば、はじめからうるのことを投影するようなことはまったくなかったようなのだが。


今日、思い立って『アンティゴネー』を読む。

アンティゴネー (岩波文庫)

アンティゴネー (岩波文庫)

兄ポリュネイケスのいっさいの葬儀を禁じたクレオン王の布告に対し、正式な葬儀を行うことで抗議する妹アンティゴネー。劇中にその弔いの様子は出てこないけれど、黙々と儀式を執り行うアンティゴネーの姿が浮かぶ。そこに、無言でうるの体を拭くY子の姿を重ね合わせるのは青臭い文学趣味にすぎるだろうか。


今日、うるのお気に入りだった、キャットタワーを解体する。Y子と二人で。祭壇は居間の別の場所に移す。


新しい猫たちの名前は、じつはもう考えてあるのだが、それはまた新しい猫たちがやって来たときに書くことにしよう。